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不運な1日

土曜の撮影会は・・・めちゃくちゃ疲れた。過去最悪だったかもしれん。

とあるバーを昼間借り切っての撮影。照明とか用意する必要もないし、個人撮影だけで団体を回す必要もないから、楽勝なはずだった。

朝はモデルの控室作りにバタバタしたが、どうにか参加者の受付時間には間に合い、なんなく第一部終了。しかし、ここで第二部から参加のモデルさんが、予定時間を過ぎても会場入りしていないことに気づく。

フリーランスで、ウチの撮影会は今回が初参加。事務所所属なら他に手もあるが、フリーランスとなるとTwitterのDMくらいしか連絡手段がない。そして、まぁ、こういう時は往々にして連絡がつかない。

とりあえずもう来てしまったお客さんには謝ってとりあえず待機してもらう。これが、例えば枠に穴のあるモデルだったらもうちょっと楽だったが、悪いことに2部から最終6部までギッチリ埋まっているのでタチが悪い。

借りているバーは18:30から通常営業に入るので、それ以上の延長はどうやったって出来ない。埋まっている5部×60分をこなすには、休憩時間やインターバルをギリギリ削ったとしても、逆算して13時には始めないと厳しい。

結局、やっとこさ連絡がついて、聞き出せた到着予定時刻は12:40頃。当然、ここに着替えの時間が加わるし、そもそもの話、12:40に来ると言って12:40に来るフリーモデルなんざいるわけない(偏見)。

とにかく、到着次第2部のお客さんの撮影を始めればいいかというと、簡単にそういうわけにもいかない・・・。2部のお客さんは、3部目で違うモデルBさんを予約していたから。だが、不幸中の幸いにして、モデルBさんはその3部目で上がりの予定だった。Bさんの上がりが遅くなるのは申し訳ないが、遅れているモデルAさんの撮影が終わるのを待つ形でスケジュールをスライド出来ないか頼んでみたらOKしてくれた。

あとは、モデルAの到着を信じて待つのみ・・・と思ったら、また別の事案が。モデルAの3部目に予約していたお客さんには、遅延のことを連絡していたのだが、午後に予定があるので、13時には撮影を始めて14時にはスタジオを出たいと言ってきた。いや、もう12時半でまだ2部目も始まったないんですけど・・・

正直、キャンセルしますと言ってもらえれば、売上は減ってもスケジュール的には余裕が生まれるので、内心諦めてくれねぇかなとも思ったりしたが・・・そう言うわけにもいかず事情を聞くと、「新幹線の時間が・・・」と言う。

え、新幹線?お客さん、どこからいらしたの??50代くらいだろうか、年配のお客さんに聞いてみた。

「私、青森なんですよ・・・」

あ、青森!?まさか撮影会の為じゃねえよな・・・?

「仕事で出張の度に、都合つけて写真撮ってるんですけどね・・・。」

そうか・・・分かるぜ・・・。北東北から東京に出てくるなんて一大事だもんな・・・。俺も就活で秋田から東京に行く度に、祖師ヶ谷大蔵の木梨サイクルまで寄ってたもんさ・・・。ましてや、この時世、なかなか東京に来られる機会も減ったに違いない。

「いやね、モデルさんは初めての子なんですけどね、撮影場所がね、バーってなかなかないから・・・参加したくてね・・・」

分かるぜ・・・そりゃあ青森つったら、ピアノもねぇ、バーもねぇ、お巡り毎日ぐーるぐるだもんな・・・。俺の町も似たようなもんさ。名ばかりの親不孝通りってのはあったが、そこで飲んでんのはそもそも親がもう死んでるような歳の親父だけだ・・・。若者向けのバーなんてないし、スナックはあっても、そこで写真なんか撮ったところで、どれがママさんでどれが心霊なのか分かったもんじゃねぇ・・・ホラーだよ。

うおお、この人をこのまま帰らせるわけにはいかねぇ。俺に流れる南部藩の血がそう言っている。2部のお客さんにお願いして、順番を入れ替えてもらい、その間に、2部のお客さんにはやっぱりモデルBさんの撮影をしてもらうことにする。

となると、モデルBさんにはまた予定の再変更を依頼しなきゃならない。モデルの遅刻で、運営の俺らが困るのはまぁ当然のこととして、一番関係ないのに振り回されたのはこのモデルBさんだが、終始快く協力してくれた。髪の毛すごい色してるし、たとぅー入ってるし、初見では警戒していたが、本件も踏まえて俺が早く言いたいモデルあるあるは、ギャル系の子の方が心広くなりがち

そして、ついに遅刻中のモデルAが会場入りした時刻は・・・13時だった。ほらな。そこから着替えて出てきたのが13:15。まぁ、15分で支度したのは俺の想定より頑張った方だと思うが、信じられないのはそこからで、控室から出てきたと思ったら俺に向かって「本当にすみませーん!ちょっと一服だけさせてください」と言って喫煙室に入って行ったこと。

ああ!?

俺もそれなりのチェーンスモーカーだから偉そうなことは言えねえが、しかし吸うべき時と吸わざるべき時があるだろ!タバコ咥えてる時に後ろからネックチョークかけてやりたい衝動に駆られたが、それよりも隣のお客さんが気になる。なんとも言えない苦笑いでただ耐え忍ぶ青森おじさん。もっと怒っていいんだぞ。

やっと喫煙室から出てきたモデルA。

「本当ごめんなさーい!お待たせしましたー♡」

と、俺に言う。

ん?え?

違う!俺は客じゃない!!

こっちこっち!こっちのおじさん!こっちのおじさん銭コア貯めて東京さ出てきたのに、あと40分しか時間ねえんだよ!60分の撮影料もらってんのに!これ以上失礼なことすんな!!

っていうか、俺を客だと思った上でタバコ吸っていいか聞いてきたのか?初対面で?遅刻してきて?すごいやつだよお前は。お前がナンバーワンだ。

結局、青森おじさんはだいぶ撮影時間が削減されてしまったが文句ひとつ言わず14時で切り上げて行った。だいぶ申し訳ないことをしたが、しかしおかげで残り時間を挽回する希望が出来た。13:20開始で5部回したらどう考えてもケツがはみ出るが、14:00から4部回すなら、休憩時間切り詰めていけばバーの営業開始時間までには終わらせられるかもしれない。

その切り詰めた休憩時間の中でもモデルAはしっかりと煙草を吸っていてハラハラしたが、どうにか18時半までに撮影を終わらせ、ドタバタと撤収を完了することが出来た。

全く別件で、途中、モデルへ差し入れするつもりだった瓶のドリンクが割れていたとかで、ある客からクレームをつけられたりもした。知らんがな・・・。こっちが預かっていたならともかく、そっちが荷物置き場に置いてたバッグのことなんて・・・。

女の前だと、第三者に対して威圧的になるタイプの痛い男がいるが、その手のやつなんだろうか。渡そうと思ってた品が壊れてたことが気恥ずかしくて、訳分かんなくなっちゃったんだろうか。「これは当然ここの運営に片付けさせます!」と高らかにモデルさんに宣言した後、足早に会場を去っていき、30秒後財布の忘れ物に気づいて戻ってきて、また帰っていった。そんなんだから瓶割るんだぞ。

何が当然なんだか意味不明だが、いちいち気にしてられないほど、とにかく疲れていた。どんなに疲れても時給は1,100円なのよねぇ。撮影時間ズレまくったせいでこっちの昼休憩も削られてんのに、ばっちり1時間分引かれるのよねぇ。

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